第一楽章 練習記号F〜
Twitterの方には投稿していたのですが、ドボルザークの弦楽六重奏曲の第一楽章を練習していて、とてもお気に入りの箇所があります。
展開部中盤のところで、以下の譜面の箇所があります。

この展開部では、第一主題と第二主題がうまい組み合わせで使われています。
切り抜いたこの譜例で示すと、1小節目でヴィオラ2本が弾いているのが第一主題の動機を変化させて躍動的にしたもの、次いで1stチェロが弾くのが第二主題の動機です。
譜面でわかるように、各パートがこれらのモチーフを組み合わせて立体的なアンサンブルになっています。
追っかけの形

「各パートがこれらのモチーフを組み合わせて」と紹介したところですが、具体的にはこのようになっています。展開部に入ったところから既に組み合わせが使われていますが、ここからより複雑に、また効果的になっているように思います。
赤く塗ったものが第一主題、青く塗ったものが第二主題です。2ndチェロが弾いた第一主題のメロディが2ndバイオリンと1stヴィオラに追いかけの形で受け渡されます。一方で第二主題のメロディが1stチェロから2ndヴィオラに受け継がれますが、これも動機の半分が重なっています。
赤く塗った第一主題は付点を含む八部音符と全音符の組み合わせであり、受け渡しの際にメロディが重なっても比較的大きく感じ取ることができます。しかし青く塗った第二主題の方はリズミカルであることから、組み合わさった際によりダイナミックな感じがします。
和声の進行(コード進行)

この箇所がエモいという理由は、和声進行にもあります。この箇所の中心部分は、Em7→A→DM7→Gとなっています。(その1小節ずつ前後は、BmとC#m7−5です)
ここで、1stバイオリンが弾いている二分音符のメロディーに注目すると、Em7の箇所でG音を、DM7の箇所でF#(Fis)音を弾いています。
これはそれぞれEm7とDM7の構成音そのものですが、これらの音が残響だったり強い印象だったりで残ると、次の小節のAコードにG音が加えられてA7になり、そしてGコードにF#(Fis)音が加えられてGM7になります。
このようにして出来たメジャーセブンスの和声がエモさの最も重要なポイントと感じでいます。クラシック音楽はいわゆるポピュラー音楽のようにかっちりとしたコード進行を前提に作られていることは少ないので、このようにメジャーセブンスの響きを持った力強い箇所は魅力的だと思います。