バイオリンの駒、魂柱、テールピースをじっくり調整していただきました。ちょっとした位置関係の違いで鳴りがかなり違ってくるのが、とても不思議です。
日常の少しずつの魂柱の位置変化と、それによる音色の変化にはなかなか気づけないと思うので、時々職人さんに最適なセッティングにしてもらうことが大事だと思います。
それまで少しずつの変化だったものが、いかに大きな積み重ねだったか、分かります。
帰り道はいつもの味噌ラーメンです。

バイオリンの駒、魂柱、テールピースをじっくり調整していただきました。ちょっとした位置関係の違いで鳴りがかなり違ってくるのが、とても不思議です。
日常の少しずつの魂柱の位置変化と、それによる音色の変化にはなかなか気づけないと思うので、時々職人さんに最適なセッティングにしてもらうことが大事だと思います。
それまで少しずつの変化だったものが、いかに大きな積み重ねだったか、分かります。
帰り道はいつもの味噌ラーメンです。

ドビュッシーの「アラベスク」にバイオリンとピアノの編曲版があって、ピアノの方と合わせてきました。
アラベスク1番の、最後のこの譜例の部分。原曲も右手が2声に分かれてとても美しい箇所ですが、Vn+Pf版だと、2声目にあたるPfの右手がとても美しいと感じます。
基本的には完全四度と完全五度の積み重ねによるしっとりしたアルぺジオなんですが、曲の最終盤でキラキラと輝くようなイメージの音が生まれ、曲の最後に向かっていくシーンにおいてとても印象的な響きになります。

先日、子ども向けイベントで弦楽の室内楽の演奏をしてきました。子ども用の楽譜が使われていることや、保育士さんたちにとって歌いやすくわかりやすいという理由から、ハ長調の曲が多いのです。
自分は2ndバイオリンのパートだったので、内声としてハーモニーを埋めるような場面が多くなります。
ここで問題になるのが、ハ長調のCやEの取り方です。基本的にはチェロがC線やG線の開放を多く使ったり、この開放弦の音程に合わせてオクターブ上のCやGが選ばれるため、2ndバイオリンでもここに馴染むC・G・Eを弾くことが正しいと考えます。ハーモニーの上では、です。
しかしながら、主に1stバイオリンが弾く旋律線では、E線の開放弦の音程のEが好まれます。開放弦を使わずにA線で押さえた場合でも、そうです。
こうなると五度調弦の性質から、チェロから受け継いできたEの高さと旋律のEの高さに、かなりの乖離が起きます。この乖離自体が悪いわけではなく、これが弦楽器の特性なわけです。場面に応じてうまく使い分ければいいのですが、特に重音になった場合(G線でC、D線でEなど)、処理がうまくいかずに怪しい音程の三度の重音になってしまいます。
少なくともG線の開放から四度上のCについては、ファーストポジションの薬指にせよ、サードポジションの人差し指にせよ、迷いなく訓練したいです。基本的にはこれができた上で、Eの音程の選択だと思っています。
バイオリンの弦は、G線、D線、A線、E線の4本があるわけですが、基本的には4本同時に交換することが推奨されています。
※もちろん、4本同時に外すわけではなく、作業自体は1本ずつです。
ところが不思議なことに、E線だけを交換した場合でも、しっかりと分かるほどにG線、D線、A線の音と弾き心地が変わります。音色が明瞭になり、弾き心地はよりダイレクトになります。
物理的にどのようなことが起きているのか皆目見当がつかないのですが、これならば多少G線〜A線の交換頻度は少なくして、(比較的値段の安い)E線を交換する方が満足度が高く、経済的だと思うのです。
この記事は、先月の記事
バイオリンのアジャスターは本当に軽い方が良いのか?
の続きです。
この先月の記事では、「どのようなアジャスターを選ぶのが良いのだろうか。」というあいまいな内容で終わってしまっていました。チタン製のアジャスターや、そのようなアジャスターを自分がこれまで使っていたことに言及していますが、結論は出ていません。
その後、検討中だったバイオリンを購入するに至ったため、いよいよアジャスターを検討することになりました。軽すぎるチタン製アジャスターは響きの面で懸念もありますが、試してみなければわかりません。
以前使っていたチタン製アジャスターはPediのL字型のものです。
しかしながら今は見当たらなくなったので、Mbergのアジャスターを購入しました。

Pediのものも、Mbergのものも、どちらもL字型のアジャスターです。L字型と言っても従来のWittnerのアジャスターのようなビス留め部分はありません。Pedi、Mbergともにです。
特にMbergのものは、アジャスターのネジを回すときの回転がとてもスムーズで、精度高く作られているのだとわかります。ずっと昔からあるWittnerのアジャスターはネジが小さい一方でそのネジが固く感じた記憶があります。でも、同じようなネジのサイズであってもこのMbergのアジャスターは難なく回ります。
弦はゴールドブラカットのボールエンドを用意し、Mbergのアジャスターと組み合わせてA線を張ります。この時点で、先月の記事で紹介した「経年劣化で曲がったアジャスター」は取り外します。
結果として、以前の曲がったアジャスターと比べると明らかに音が変わりました。具体的には以下のような点です。(Mbergのチタン製アジャスターにした時の印象です)
悩んだ末このように言語化しましたが、これら2つは表裏一体であるように感じます。
もちろん製品としての個体差や楽器との相性もあるため断定的に紹介することはできませんが、明らかにチタンのアジャスターへの取り替えで音色も変わりました。
ただし、表裏一体と書いたようにこれが良いかどうか、好みかどうかは意見が分かれるところと思います。雑味がないということは良いことのように思えますが、その分キラキラ、ギラギラとした音の成分が減るのです。自分はゴージャスさを纏った音が好みなので、どちらを取るか悩むところです。
一方で、耳元で刺さらず心地よい音色を求めるのであれば、多くの場合このMbergのアジャスターはマッチするでしょう。試してみる価値があります。
Mbergのアジャスターに取り替えたところから、3週間ほどたちました。
まずはお試しと思い3週間弾いていたわけですが、所有しているほかの楽器と比べてもE線の音色がスッキリしすぎていて、やや寂しく感じます。アジャスターはいつでも取り替えられますので、また別のものを試してみることにしました。
付け替えたのは、Shirakawaのアジャスターです。ただし、Twitterのほうでは時折紹介していますが、スワロフスキーのクリスタルがついているものです。このスワロフスキーのクリスタルは、何か音響の効果を狙って取り付けたわけではなく、愛着のひとつとして付けています。
経験上、スワロフスキーのクリスタルを付けたもの、そうでないもので大きく音色や音量が変わることはないように感じています。(ネジの中心に合わせてクリスタルを付けるように気を付けてはいます)
余分な物を付けるのか、ということに関しては様々な考え方がありますが、自分は気に入っています。
ここで、比較対象としてはゴールドブラカットのループエンドを用意してShirakawaのアジャスターに取り付けられれば良かったのですが、手持ちの弦の都合でHillのループエンドのE線を使用しました。

「経年変化で曲がったアジャスター」→「Mbergのチタン製ボールエンドアジャスター」→「Shirakawaのループエンドアジャスター」と替えてきましたが、今回のShirakawaへの変更でも大きく音色が変化しました。具体的には、Shirakawaのアジャスターに取り替えたことによってチタン製アジャスターの時にスッキリし過ぎた音色が、キラキラした音に戻っています。
一度チタンのアジャスターを使っているので曲がったアジャスターとShirakawaを比べることは難しいですが、音量感が増したことでShirakawaのアジャスターに満足しています。
ここで断り書きをすべきことがあります。前述のようにボールエンドからループエンドに変えた際に弦の銘柄が変わっているのです。変更前がゴールドブラカットで、変更後がHillです。値段で比較するとゴールドブラカットよりもHillのほうが高価であるため、弦の質の違いも音色の変化に影響を与えた可能性は考えられます。
しかし自分の経験ではHillは野太い音が出るというよりも繊細さで美しい音色が特徴であると感じていて、それでもShirakawaのアジャスターとの組み合わせで音量感が増したとなると、これはアジャスターの影響が大きいのではないかと現時点では考えています。
また、これもまた経験としてGotzのアジャスターとShirakawaのアジャスターは設計の考え方や素材が近いのか、音色もまた近い傾向になると感じています。すなわち、今回付け替えたものがShirakawaのアジャスターではなくGotzのアジャスターだったとしても、同じもしくは近い結果になることが予想できます。
ここまでで、なんとなくチタン製アジャスターはすっきりした音色、GotzやShirakawaのアジャスターはキラキラ、豪華、重厚といった音色をもたらすという特徴が見えてきました。
比較として試したチタン製アジャスターはボールエンドのタイプですが、こうなってくるとループエンドのチタンアジャスターが別の比較対象として気になり始めます。
試す前のイメージではGotzやShirakawaのアジャスターの音色を気に入るだろうとは思いつつも、ループエンドのアジャスターや同じくループエンドの弦を選ぶことで、弦長や駒への圧力を揃えた上でチタンのアジャスターと一般的な素材のアジャスターを比較してみたいのです。
これは、機会をみて購入し、試してみたいと思います。
Twitterの方には投稿していたのですが、ドボルザークの弦楽六重奏曲の第一楽章を練習していて、とてもお気に入りの箇所があります。
展開部中盤のところで、以下の譜面の箇所があります。

この展開部では、第一主題と第二主題がうまい組み合わせで使われています。
切り抜いたこの譜例で示すと、
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1小節目でヴィオラ2本が弾いているのが第一主題の動機を変化させて躍動的にしたもの、次いで1stチェロが弾くのが第二主題の動機です。
譜面でわかるように、各パートがこれらのモチーフを組み合わせて立体的なアンサンブルになっています。

「各パートがこれらのモチーフを組み合わせて」と紹介したところですが、具体的にはこのようになっています。展開部に入ったところから既に組み合わせが使われていますが、ここからより複雑に、また効果的になっているように思います。
赤く塗ったものが第一主題、青く塗ったものが第二主題です。2ndチェロが弾いた第一主題のメロディが2ndバイオリンと1stヴィオラに追いかけの形で受け渡されます。一方で第二主題のメロディが1stチェロから2ndヴィオラに受け継がれますが、これも動機の半分が重なっています。
赤く塗った第一主題は付点を含む八部音符と全音符の組み合わせであり、受け渡しの際にメロディが重なっても比較的大きく感じ取ることができます。しかし青く塗った第二主題の方はリズミカルであることから、組み合わさった際によりダイナミックな感じがします。

この箇所がエモいという理由は、和声進行にもあります。この箇所の中心部分は、Em7→A→DM7→Gとなっています。(その1小節ずつ前後は、BmとC#m7−5です)
ここで、1stバイオリンが弾いている二分音符のメロディーに注目すると、Em7の箇所でG音を、DM7の箇所でF#(Fis)音を弾いています。
これはそれぞれEm7とDM7の構成音そのものですが、これらの音が残響だったり強い印象だったりで残ると、次の小節のAコードにG音が加えられてA7になり、そしてGコードにF#(Fis)音が加えられてGM7になります。
このようにして出来たメジャーセブンスの和声がエモさの最も重要なポイントと感じでいます。クラシック音楽はいわゆるポピュラー音楽のようにかっちりとしたコード進行を前提に作られていることは少ないので、このようにメジャーセブンスの響きを持った力強い箇所は魅力的だと思います。
今日のこの記事では、見慣れないバイオリンのアジャスターの話題があります。
現行品として流通しているものではないのでは、と思いましたが、ネット上を隈なく探してみるとAmazonの販売ページで一つだけヒットしました。
バイオリンのアジャスターは、G線などを含めて全ての弦につけるのであればL字型のものがよく使われます。また、E線用としてはL字型のものではなく、
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ループエンドの弦にマッチしたもう少し小さいアジャスターが多く用いられます。これらのアジャスターはWittner社やGotz社が製造しています。
もちろん他のメーカーのものもありますが、一般的にはWittnerやGotzのアジャスターが選択されることが多いように思います。
ここからが本題です。今、購入を前提としてお借りしている楽器が手元にあります。この楽器に先ほど紹介したアジャスターがついているのですが、どうも年季が入っているようで…

かなり使い込んでいるように見えますが、見た目だけではありません。一見これはWitterのL字のアジャスターの形に似ているように思いますが、

この角度から見てみると、アジャスターのL字が本来の直角の角度ではなくなっていることがわかります。
いえ、正直に述べればこのアジャスターが本来どんな設計のものだったのか確証がありません。
しかしこのフックの部分が弦の張られた方向と垂直に近くなるには、相当ネジを回し込む必要があります。L字の逆側がバイオリンの表板に近づいて心配になる程です。やはりこの状態は当初の設計通りの形ではなく、老朽化で変形してしまったのではないでしょうか。
お借りした楽器の場合は絶妙な角度でE線のボールがアジャスターのフック部分に引っかかっていたのですが、ペグとアジャスターで音程を合わせているうちにボールがアジャスターから滑り落ちてしまいました。「滑り落ちた」と言っても弦が切れた時と変わらない衝撃です。
E線が切れた時の「バキッ」という鈍くて鋭い音と衝撃は、何度経験しても慣れないものです。
「この楽器を買います」とお店に伝えに行くときにアジャスターを交換してもらえば良いのですが、それまでG線、D線、A線の3本しか弦がない状況がなんとなく気にかかります。4本の弦で駒から表板へ力が入っていた方が偏りが無くて良いような気がするのです。
なので、間に合わせということでアジャスターなしで直接E線をテールペースからペグに渡して張ります。細いスチール弦ですから音程の微調整はできません。E線をある程度合わせたら、それを基準にA線、D線と五度下に向かって合わせていきます。
弾いてみると、驚いたことに刺激のないE線の音が出るのです。A線以下の弦もちょっと薄い音のような気がします。てっきり余分なパーツがなくなった分、楽器やパーツが振動しやすくなって大きく魅力的な音が出ると思っていたのですが。
アジャスターは軽ければ軽い方がいい、できることならば無い方が良い*と思っていましたが、たまたま試した結果はそうでなかったのです。
*一つの例として、Wittner社などが作っているギア内蔵型のペグを導入することでアジャスターなしでも細かなE線の調弦ができるようになります。
アジャスターを選ぶにあたっては、これはもう試してみるしかないのでしょう。ただ、チタンなどの軽い素材が一番だという決めつけは良くないと推察するようになりました。
チタン製のアジャスター自体はかなり前から存在したように思いますが、最近では新作として売られている楽器にSTRADPETのチタン製アジャスターが付けられているのを時折見かけるようになりました。
もちろん相性良くこれらが合う楽器もあるのでしょう。自分もこれまでチタン製のアジャスターを愛用してきました。これまでL字型のアジャスターは楽器の音に悪い影響があると決めつけていたところがありますが、正しくない考え方だったようです。
このだらしない角度になったアジャスターはもう使えそうにないので替わりのアジャスターを探しますが、だいぶ骨の折れる道のりになりそうです。
参考に、今回変形していたアジャスターの重さはキッチンスケールで測ると5gです。これをつけた時の音は、良かったのです。
きっかけは単にニスの補修の相談でした。
普段とは違う工房にニスのことで伺ったのです。
せっかく初めてお会いする職人さんとお話しできるわけですから、長年自分のバイオリンについて気になっていた鳴り方の癖や音色の方向性について相談し、その場でいくつかのバリエーションで調整を試していただきました。
駒や魂柱の位置を1ミリメートル、もしくはそれ以下の精度で移動してもらいます。
普段の工房では調整はお任せで立ち会うこともなく、もへーっと仕上がりを待ち、オッケーです!と受け取って帰るばかりでしたが、今日のように目の前で色々試していただくのは興味深いものです。
恐ろしく悪い沈んだ響きにもなれば、キラキラした音色と枯れた成分のバランスが取れた音にもなります。キラキラ、枯れた、といった言葉で単純に音色を表せるものでもないですけれども。
振り返れば、
ということを、いささか決めつけて思い込んでいた気がします。
決めつけてしまったら、普段の工房に行った時も「いつもの」としかオーダーできませんし、調整をしてくださる方も「この人はこういうセッティングが好きだから、今回もこうだな」としかなりません。
こんな調整方法もあるよ、という提案がなかったとしてもその職人さんが悪いわけでもなんでもないのです。
ですからアマチュアの奏者であっても、いろいろな調整の方向性があることを知って職人さんと相談できるようになれば、楽器に関する楽しみ方も広がるように思います。